「ああっ……!」
どうしてこんなことになったのか、拓也にはわからなかった。絶え間なく押し寄せてくる衝撃に喉を鳴らしつつ、ほんのわずかに残る頭の冷静なところでどうにか思考する。
なぜ、こんなことになっているんだ。
「ひゃあ!」
びちゃり、と乳首に降って来た冷たいものに堪らず背がしなる。拓也はどうにか快楽を逃がそうと身をよじらせるが、両手足を拘束された状態ではまるで意味をなさなかった。
大学の長期休み。夜のバイトを終わらせて自宅に向かっているところで、拓也の記憶は途切れている。なにやら夢精時のような気持ちの良い快楽に目を覚ますと、窓のない手術室のような空間で、歯科医院にあるようなリクライニングのイスに寝かされていたのだ。
枕の後ろに繋がれた手錠により腕は半端に上がったままで、ちょうど視界の端に手首が見える形だ。ぼーっとした頭でそのまま視線を下げて、自分が生まれたままの姿であることにぎょっとする。つまり全裸だ。
「ンあっ!?」
あわてて周囲を見渡そうとした拓也に衝撃が走る。一瞬で頭が真っ白になり、制御できない体が喉をさらしてビクビクと震える。続いて二度三度と衝撃が訪れるたび、拓也は声にならない声で喉を震わせ続けた。
「な、なんだよ……これ」
やっと衝撃が治まった頃、息も絶え絶えに自身を見下ろして、絶句した。
開かれたまま拘束されている足の間に、ゴツゴツとした大きな機械があった。機械は横に三段に分かれていて、中段には棒状の突起がいくつも生えており、どれも強弱の差はあれど、絶え間なく振動しているのが見て取れる。
下段の機械は自分の体で見えないが、上段部分には小さな電球がいまにも切れそうな光を点している。その不安定な輝きがどこか恐ろしく、拓也はぞっとした。
「だ、誰か! 誰かいませんか!」
機械の駆動音が響く中、必死に出した声は部屋に反響するだけで返事はない。見える三方の壁には扉らしきものはなく、何かよくわからない機械や器具が飾ってあるだけだ。腕は拘束され、足は二股に分かれた足置きに膝を押し付ける形で鎖で縛られている。これでは立つことはおろか、膝を曲げることも出来はしない。
状況はわからないが、どうにかしてここから出なければ。拓也はそうもう一度声を張り上げようとしたが、突然ピシャリと冷えたものを股に受けて「ひい!」と叫んだ。
いつのまにやら機械の中段が回転しており、正面にある筒状の棒から何かが発射されたらしい。先端から薄いピンク色の液体がポタポタと滴っている。股は男根を含め、太ももまで濡れてしまっている。
まったく訳がわからない。滴る液体が尻穴の方まで落ちてくる不快感に眉を潜めつつ機械を注視していると、再び中段が回り始める。次に正面に来たのは鉛筆くらいの細い棒で、やはり小刻みな振動を続けていた。
ピー……ガガ……
「え?」
機械の上部からかすれた音が響く。必死に聞き取ろうとする拓也の耳に、雑音だらけの機械音声がわずかに聞こえた。
『Experiment start』
耳に届くのは自分の喘ぎ声と、止むことのない駆動音ばかりだ。
「ひっ、あ、また、ぁ、イク! イクっ、からあ!」
ガンガンと腸内を穿つ勢いに悲鳴を上げるも、機械の動きが止むことはない。拓也は沸き上がる快楽に身を固くし、「うぁあ!」と全身を弓のようにしならせた。幾度も繰り返される衝撃に、すでに頭の中は真っ白だ。目の前でチカチカと星が散り、突き出した舌を引っ込める余裕もない。
「んんっ」
すでに白濁で濡れそぼった男根には、絶えず刺激してくる卵のような機械が複数個引っかけられている。先端を担う一つの卵が尿道からあふれた液体をぷくぷくと泡立たせた。
「うあ!」
ちゅぽん。いやらしい音とともに、中に入っていた機械が抜かれた。ヒュウっと突き抜ける寂しさに、無意識に尻に力を込める。ぴくぴくと自身の穴が動くのが感覚でわかった。
「はあ、はあ、あ、それ……それ、やらあ……」
どうにも回らない頭で機械を見た拓也は、回転を始める中段を見て必死に声を上げる。しかし無情にも機械は回転を終え、筒状の棒から液を噴射した。扇状に広がった液が全身にかかるのを止める術はない。飛び散る雫にさえ悦を覚える体がひくひくと疼いた。
射精するたびに場所を変えて浴びせられるそれがなんなのか、こうも望まぬ絶頂を強制され続ければさすがに理解できる。絶望と快楽の狭間で揺れる拓也の下で、再び機械が動き始めた。
「ひああ! あう、んあ!」
先ほどより一回り大きな棒が、閉じかけた尻穴を無理やりにこじ開けて入ってくる。ぶつぶつと粗い突起物が腸の肉を勢いよく擦り上げ、奥の奥を激しく責め立ててくる。
液体を浴びせられ、前の棒より太い物で責められる。射精をしたら、また液体、また太い物、射精……。くり返される無慈悲な行為に、拓也は心身ともに疲れ果てていた。
「ぅああああ!!」
ブブブウウ……。ひときわ厳しい振動が前立腺を刺激する。狙い澄まされたそれに耐えきれずに嬌声を上げ、再びの衝撃を覚悟する。
しかし衝撃は、また別のところからやって来た。
「ひっ……ぃぎあああああ!」
男根を貫く異物の痛みに、拓也は悲鳴を上げた。指よりも細い棒が尿道を引き裂くように進んで来たのだ。あまりの衝撃に一瞬意識を失った拓也だが、ゆっくりと抜き挿しされるそれに引き摺られるように現実に戻され、尻穴を搔き乱す上下の動きにがくがくと体を躍らせる。もうどっちが下でどっちが上か、自分に何が起きているのかを拓也は理解出来なかった。
「あ、あ、あ、あ」
ほとんど音にならない吐息を漏らし、機械の動きに翻弄されるまま快楽を享受する。そうすると、今までの人生で感じたことのないほどの気分の良さに胸が躍った。「きひっ……」耳に入った音が喜色ばっていることに彼は気づかない。
本能のままに嬌声を上げて身をくねらせた彼は、しかし快楽の解放が堰き止められていることを思い出す。必死になって機械を見ると、どうやら引き抜く気配はない。
「とってえ! イギっ、イギだいがら、ああ! あっ、おねがっ」
涙と涎をまき散らしながら頭をふり回す。逃げるためでなく、快楽のために拘束を解こうとあがき始める。
機械の上部にある電球が赤く点滅した。
「ああッ!」
しゅぽん! 尿道の棒が勢いよく抜かれ、すさまじい衝動とともに堰き止められていた白濁が穴から飛び出した。あまりの快楽に喉を震わせて上向いた彼は、そのまま全身をビクつかせながら言葉もなく悲鳴を上げた。くるりと白目を剥いた目から涙が滴り落ちる。
震えたまま動けない彼の尻穴から再び棒が引き抜かれる。うめき声さえ上げられないまま、機械から噴出された液体が口の中に流れ込んでくる。
今度腸内を抉ったのは、いくつもの玉が連なった棒だった。一つ入るごとに「くぽん」と口をすぼめる入口がそのたびに快楽を運んでくる。男根を囲む卵状の機械も一層動きを増したようだ。すっかり広がった尿道口からちょろちょろと快楽の印が流れ続けているのを感じる。
拓也はほんのわずかに残った理性で、もう一度考える。本当に、どうしてこんなことになったのだろう。
しかしそんな考えも、突きあがる快楽に飲まれてすぐに消えてしまったのだった。
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