岡原保は27歳のサラリーマンだ。
学生時代はバスケットボールで鍛えた筋肉質の体格、健康的に日焼けした肌。ガタイのよさに反して顔立ちは人懐こく、よく大型犬にたとえられる。性格は生真面目で責任感が強い。なるほど、主人の命令を忠実に守る大型犬に見えなくもない。
保が働く会社は好事家向けのセックスマシンの開発・製造・販売に携わっていた。
西暦2121年現在、アダルトグッズは劇的な進化を遂げた。一世紀前は自慰といえばローターやバイブ、ディルドを用いて行うものが主流だったが、その市場は完全にセックスマシンに取って代わられた。セックスマシンの外観はリクライニング式のマッサージ機に酷似している。この内部には様々な機能が収蔵されており、対象者に性の悦びをもたらすのだ。
保の所属部署はセックスマシンの性能実験を担当している。売りに出すマシンに欠陥があっては大問題だ。これまでは希望者を募って試験を行ってきたが、今回は不測の事態が発生した。
「俺が?いやですよ」
「そんな事言わず、岡原。な、この通り、頼む」
上司と同僚が頭を下げる。元来人のいい保は頼まれると断れない。
「遅刻って……他に代わりはいないんですか」
「いない」
「日を改めては」
「あのマシンはオーダーメイドの特注品だ、納品は明日に迫っている。試験を行えるのは今日しかない」
「そんな納期ギリギリでいいんですか?」
「いろいろスケジュールが差し迫っていてな……」
「てかなんで俺?他にもたくさんいるじゃないですか」
「残念ながらお前以外は皆既婚者で妻子持ちだ。パートナーと子供がいる男を試験に使うのは……その、色々とまずいだろ倫理的に」
「独身で彼女いない歴27年の俺なら問題ないと?喧嘩売ってるんですか」
保は声を荒げ気色ばむものの、妻子持ちの同僚たちにこぞって「嫁を裏切れない」「セックスマシンで絶頂したら娘に合わす顔がない」と泣かれて弱りきる。
「~~~~~仕方ないな……わかったよわかりましたよ、俺が生贄になればいいんでしょ!」
半ばやけっぱちで怒鳴れば、上司と同僚が「やった!」「命拾いした!」と手を取り合って歓喜する。策に嵌められた気がしないでもない。保は腹を括り、「で、どうすりゃいいんです?」と上司に聞く。
「まずそのマシンに掛けてほしい」
「こうですか。……意外と寝心地がいいな」
一見したところ何の変哲もないリクライニングチェア。人体工学に基づいた設計で、背凭れのカーブが負荷を軽減する。保がチェアに身を沈めたのを見計らい、上司がゴーサインを出す。
「レバーを押してくれ」
「はい」
同僚が歯切れよく答え、操作盤のレバーを押しこむ。するとリクライニングチェアからバーが飛び出し、保の身体を拘束する。
「なっ!?」
「岡原はセックスマシン初体験か」
「あ、当たり前ですよ。こんな高級品……じゃなくて、オナニーなんて手でじゅうぶん間に合いますから」
「それはまた随分と原始的だな。このマシンは様々な機能を搭載しているぞ。たとえば……」
上司が意味深にほくそ笑んで指を慣らす。リクライニングチェアの背凭れが急に倒れ、肘掛けが左右に展開。両翼を広げた肘掛けから、大小のアームが生える。そのアームが保の身体によじのぼり、濃紺の背広を脱がしにかかる。
「!待、」
制止の声を無視してアームが蠢き、保を丸裸にする。
「それは最新の外科手術にも応用されるアームだ。人間の指を上回る繊細な動作を可能にする」
「やめろ、くるな!」
パニックを起こして喚き、椅子から腰を浮かせかけるやすかさず拘束具が手足に嵌まる。
「なんでセックスマシンに拘束具が付いてるんですか!」
「そういうのが好きな発注主でな」
「意味わからん!」
ヒステリックに絶叫する保にアームが襲いかかる。リクライニングチェアの底部、尻があたる部位から異物が突出。それは刷毛車だ。刷毛で覆われた滑車が自動回転、保のペニスをくすぐりだす。
「~~~~~~~~~~~んあっあ、あふあっ、や、よ、よせ」
刷毛の回転は容赦なくスピードを上げる。無数の柔い毛で一番敏感な粘膜を刺激され、口からだらしなく涎が零れる。ウィン、ガシャンと機械音がして視線を下げれば、チェアの底部に黒い男根が生える。
「これ、は」
「豚モデルのペニスだよ。知っているか岡原、豚のペニスはドリル状に先端が巻いていて一度はめると抜くのが困難なんだ」
「嘘、だろ」
絶望する保。言われてみれば確かに、その突起はドリル状になっていた。あんな物をアナルに刺されたらどうなるか……
「課長お願いです、やめさせてください、無理ですこんなッ、あっあっ!」
刷毛車が亀頭から裏筋を巻き込み白濁をしぶかせる。チタン製アームが保の首といわず肩といわず腕といわず腹といわず群がり、快楽を与えてくる。
「ふあっあ、ンっあやめ、さわんなンなとこ、あっふあ、らめ、やっあッん」
セックスマシン初体験の保には強烈すぎる快楽。ドリルペニスが低い唸りを上げて保のアナルを穿ち、肉襞をかきわけて回転。前立腺に電流が走るような衝撃に、たまらず仰け反って一度目の絶頂。その間も刷毛車とドリルペニスは回り続け、追い上げられるがまま二度目の絶頂を迎える。
「んん゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッあ!」
「すごいな岡原、セックスマシンとの相性抜群だ」
「今まで手でしかしてこなかったんなら無理もない」
同僚たちが口々に保の痴態を評して茶化す。保はビクビクと痙攣、何度も何度も射精に至らしめられる。セックスマシンにはバイブ機能が搭載されており、ドリルペニスと刷毛車は言わずもがな、全身に振動を与えてくるのだからたまらない。全身が性感帯と化した今の保には、マッサージ程度の震えでさえ媚肉をとろかす責めとなる。
「かちょ、もっや、わかった、これひゅご、性能しゅご、らめッ、俺ィきすぎてっ頭まっしろンあっ」
連続絶頂の消耗で呂律が回らない保が、ピストン運動に合わせて激しく腰を揺する。
そんな保の姿を観察し、課長は満足げに頷く。
「仕上がり上々だな。明日の納品は頼むぞ岡原、我が社の若いのを一人サービスしてくれというのが先方の要望だ。お得意様だからな、しっかり接待してこい」
セックスマシンがマスターベーション専用とは限らない。このマシンを調教に用い、性奴隷を作り出す変態は意外と多いのだった。
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