キミのこと機械でぐちゅぐちゅに犯してあげる

 ふ、ふ、と呼吸が荒い。何が起きているのかわからなかった。退勤後同居の男が突然会社の前に現れて――まるで誘拐されるみたいに車に無理やり放り込まれて、目覚めたらこうなっていた。下肢を剝き出しに分娩台のようなものに縛り付けられている。足首と手首に拘束具が巻き付いていて、台から一センチも浮かすことができない。
「何、どこ、病院……?」
 室内は明るかった。首は自由なので見渡すことができる。寝かされている台の色は淡いグリーン、ベッドを遮って個室のようにできるカーテンの色は水色。記憶が混濁している。車に乗った後自分はいったいどうしたんだっけ。どうしてこんなに、走った後みたいに、心臓がばくばくしているんだっけ。
「綾くん」
 名前を呼ばれた。見ると同居の男が――学生時代に親しくなってそのままずるずると一緒に住み続けている友人が、ドアにもたれてひらひらと手を振っている。綾はすべてを察した。またか! この男は手癖も趣味も性格も非常に悪くて、時折綾をこうやって弄ぼうとするのだ。
「綾くんビデオ回すね」
「離せ。俺をここから出せ」
「お仕事だからさあ。イくときちゃんと分かるように申告してね」
 話が通じない。綾が顔を歪めると、男は、あは、と笑って、「きれいな顔だね」と綾に見惚れる。綾は男のこのうっとりした顔が大嫌いだった。見られていると虫唾が走る。
「じゃあまたね、綾くん」
「待っ――!」
 男はドアの向こうの廊下に消える。同時に綾の足を乗せていた台が勝手に開いていく。太ももの上までかかっていたシャツの裾が左右に持ち上がって、今まで隠れていたおちんちんがぽろんと姿を現した。その光景のなんと間抜けなこと! 綾は唇を噛んで屈辱に耐える。どうせまたバカみたいな茶番に付き合わされるのだ。カーテンの隙間から歯科医で使う器具のようなものが見える。細長いホースがついていて、後ろの大きな機械に繋がっている。硬質な音を立てながらそれがゆっくり動いた。綾の下肢の上まで来て、太腿にローションが垂らされる。冷たくて嫌な気持ちになる。ホースはゆっくり動いて綾の胸元で止まり、同じように胸の上に液体を垂らした。
「服の上だぞ……」
 思わず文句を呟くと「あゴメン!」と廊下に声と足音が響く。去ったばかりの男がやってきて、綾のすぐ隣に立った。
「寒いかなと思ってそのままにしちゃった」
「この状況でその配慮が必要か?」
「どうしよ。手取るのめんどくさいし、はだけるだけでいい?」
 男の指がボタンを摘まむ。下から全部外されて、
「ぁ……っ!?」
 そのままただシャツをどかせばいいだけなのに、わざわざ服の上から乳首に触れた。ローションはあっという間に布に染み、シャツの下から尖った桃色が透けた。男は布越しにくりくりと指を動かして綾を弄ぶ。
「やめ……っ、離せ! 触るなあ……っ!」
「綾くん全然気持ちよさそうじゃないから、お手伝い」
「いきなりこんなことされて、ぁ、気持ちよくなるわ、け……、あ、だからやめろって、ばか!」
「口開けて」
「ゃ、だ! いやだ!」
「べろ出そうね」
 男の口が綾に近付くと綾はどうしても口を開けてしまう。舌を出してしまう。そうした方が気持ちがいいと学生時代からずっと知っていた。薄い舌が、ぬちゃ、と綾の舌を舐め上げながら入ってくる。上顎の内側を器用に舐められて鳥肌が立った。綾にキスしている男が鼻先で、ふ、と笑った。
「寒い?」
 綾は答えない。唇が離れていったのが悔しくて男をただ睨みつける。男はゆったり笑いながら、カーテンの隙間から何かを引っ張った。筒状のものが手の中に握られている。男が指を動かすと、合わせてくにゅくにゅと筒も変形する。綾にはそれが何か分かった。オナホだ。後ろ側は複数本銀色のパーツが伸びていて機械に接続されている。
「入れてあげんね」
 キスで勃起した綾のおちんちんに筒の入り口が宛がわれる。綾の皮を男の指が下におろす生々しい感覚。
「ぅぁ……っ、あ!」
「あったかくなった?」
 なるかバカ! 綾はそう叫びたかったのに、男はみちみちと綾のおちんちんをオナホにしまうから、あえぐことしかできなくなる。
「や……っめ、やだ、ぁ、ひ……っ!」
 オナホは薄くてくにゅくにゅで柔らかかったから、男の指の硬さを綾は感じることができた。綾が腰を浮かせるのを面白そうに男は眺めている。
「きもち?」
「やめ、やだ……っ、つぷつぷしないで……っぁ、あ!」
「うん、俺はここでおしまいね」
「ぁ……?」
「綾くんの今日の相手はこれです」
 男は、しゃ、とベッドサイドのカーテンを開けた。見えたものが何なのか、綾にはまるでわからなかった。大きな機械だ。いくつも器具がついていて、冷たそうで、不穏だ。
「なに……?」
「お仕事だってば」
 機械の一足が綾のお腹に伸びてくる。先端は丸くて、柔らかそうなボールみたいなものが綾の太腿の内側を押した。
「綾くん今日、これとヤってね」

「やだ、ゃだ、いやだあ……っ!」
 男の姿はすでになく、部屋には綾と機械だけだ。じゅぶ、じゅぶ、と濡れた音が足の間から聞こえて、綾は爪先を内側に丸めた。機械の足は容赦なく綾を突く。綾が身をよじって逃げようとしても、逃げた分だけ深く差し込まれる。
「あ、あ、ぁ、あ!」
 突かれるごとに綾は悲鳴を上げた。機械には緩急がなかった。一定のペースで綾を追い詰める。綾が腰を浮かすとおちんちんがオナホの中に深く突き立てられて、先走りとローションがぐちゃぐちゃに交じり合った。
「や、ぁ、うあ……っ、ひ……っ、やだ、やだやだやだもうやめ、ぁ、ぁあ……っ、死んじゃう、死んじゃう……っ!」
 綾は逃げたいのに機械は全然許してくれない。それどころかもう一足が伸びてきて、綾の間に狙いを定める。それに気づいて綾は悲鳴を上げた。
「もうだめ、入らない、やめ、やめて広げないで、ぁ、あ、だめ、だめなのに……っひ、あ、ああああ!」
 先端はくんにゃり柔らかいのだ。それがよくない。隙間をぬってずぶずぶと入ってきて、あっという間に奥まで来た。先に入っていた一つ目と同じ形で、先端の玉同士がぶつかり合って下品な音を立てた。ぐちゃ、くぽ、ぬぷ、と濡れた音が絶え間なく聞こえる。自分の内側から漏れる淫靡な音から逃れようと、綾は思わず耳を塞ごうとした。両手は押さえつけられているから、もちろんそれは叶わない。結果綾は少しだけ背中を浮かせてしまって、そしたら。
 ずぶ、とより深くに、二本が同時に入ってしまった。
「…………っ!」
 達した瞬間、声も出なかった。綾の内側がぎゅうううっと締まった。オナホの隙間から、出したばかりの精液がびちゃびちゃと溢れた。びく、びく、と痙攣する内側がつらくて綾は身を引く。機械の足は二本とも容赦なく綾を追いかけてきて、当たってしまった綾のいいところを狙い撃ちにする。ずぼ、ずぼ、ずぼ、ずぼ、何度も突かれて綾は声にならない声を上げる。
「……、……ぁ、……ぁああ……っ!」
 せめておちんちんをオナホから出したい。
「イってる、イってるから、も、ほんと、やだ……っあ、ああ!」
 腰を引くと二本の棒を深く咥え込んでしまい、棒から逃れようとするとおちんちんをオナホに突き立ててしまい、地獄だった。声が枯れるまで綾は喘いで、もうやめて、と叫び続けた。綾の中の二つの棒は綾の前立腺を押し潰し続け、綾はそのたび背中を逸らせて震えた。びしゃびしゃにイきっぱなしになって、綾はとうとう意識を落とした。

 目覚めた綾の至近距離から男は綾を観察していた。綾が目を開けたことに気付くとにんまり笑って、お疲れ様ですとピースサインを立ててくる。ふざけんな、と綾は男を睨みつける。と、もう一本指が立った。
「三本目どう?」
「死ね」
 もしもこのとき、綾がお願いしますと言ったなら、男のペニスを入れてもらえたのに。
 綾はそれを知らない。未だに体は甘くうずいていた。

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