「ン”ッン”ッン”ッン”ッ」
布を噛み嗚咽を漏らす。背後から乱暴に掴まれた腰への間断無い刺激に気が狂いそうになる。
(エリダ……ごめん)
セディ・オブライエン青年は、モーテルのベッドの上で犯されながら懺悔した。
長いブロンドに青い瞳、ギリシャ彫刻を思わせる端正な顔はしかし、絶え間ない性的刺激による苦痛に歪んでいる。
背中で組まされた両腕の神聖なほど白い肌には手枷が食い込み、薄く痣ができていた。
「ンウッ！グッ」
「この位でへばるなよ」
セディを犯しているのは、エリダという黒髪の美しい男だった。年の頃はセディと同じく20歳前後。背が高く筋肉質な彼は、男らしい体格に反し、顔は細く女性的にすら見える。
2人の行為は、傍目には乱暴極まる凌辱に見えた。両手を拘束され、限界まで顔を紅潮させ涙を流すセディの表情は、まさしく被害者のそれだ。
しかし、2人は恋人同士であった。
1年前、2人の同棲していたニューヨークのアパートから、セディが忽然と姿を消す前までは、2人の営みはこのような荒々しいものでは無かった。
尤も今のこれは、エリダがセディを懸命に捜した末に2人が再会した後の初めてのセックスであったが。
「どうして……俺を捨てた」
「ン”ッ」
「答えろ」
「はッ……あっ」
噛まされていた布を解かれる。口の端から少量の唾液が零れた。
「ごめん、なさ……ッ」
涙を滲ませた瞳で、背後のエリダを見上げる。
「ッ！？あ”ッ」
「『ごめんなさい』、ね……残念だ、セディ」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッ」
容赦無く突き上げられる。さらに腰を両手で掴まれ、より深く抉られた。
「ア”ッ！ア”ッ！」
「つまり、他に男が出来たんだな」
「ッ！？ちが、」
「なにが違うんだよ」
「あ”あ”ア”ッ！イッちゃ…」
「ほら」
「オ”オ”オ”オ”オ”オ”ッ！」
暴力的な快樂にセディは声を上擦らせ、絶頂した。
「あ、……あっ……」
「俺に見切りをつけておいて、俺より先にイくとはな」
「！！ッあ、あ”ーーッッ！！」
「随分だな、ハニー？」
「ああア”ア”ア”ア”ァ”ッ！！やだッ！！や”だぁッ！！イッてる！イッてるからあァ”ッ」
絶頂し敏感になった所を、間髪入れず穿たれる。
何度も何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
まるで、失った2人の1年を取り返すようだったり
「……あ、う」
(エリダ……ごめん。本当にごめん………)
…1年前、セディは街の通りでエリダにキスをねだった。
同性愛者である事がバレれば、双方の社会的地位が危うくなることを承知で交際していたのに。
セディは怖くなった。エリダへの想いに、歯止めが効かなくなっている事に気付いたのだ。
そして気がつけばセディは、アパートを飛び出していた。
「……気づいてたよ」
エリダがそっと呟いた。
「セディが他に目移りした」というのは一抹の不安に過ぎず、
エリダはセディの罪悪感ゆえの行動を内心で理解していた。
快樂に乱れ、力尽きそうなセディを背後から柔らかく抱きしめる。
「愛してる、セディ」
あの日ねだられたキスを、エリダは一年越しにセディの唇に贈った。
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