消灯時間を過ぎた病院は静寂に包まれていた。
アパートや一軒家、店舗であればそれぞれで賑やかで騒がしい活気で盛り上がっていただろうが、そうはいかない。大抵の病室では患者たちは眠ったり読書をしたりなどして静かに夜に身を委ね、夜勤のナースたちはナースステーションで職務を全うしていた。しかし。
「んっ……く、ぅ……」
病院の一角、サイドテーブルのランプだけが光源となっている個室の病室は違った。
身につけていた白衣はおろか、滅茶苦茶に着崩された水色のシャツで腕を絡めとられながらも口に手の甲を当てて喘ぎ声を堪える男がベッドの上で膝立ちになっている。神経質そうで少々痩せ気味な男ではあるが、体格は良く、鍛えてそうだ。しかし鋭利な流し目は眼鏡の奥で潤んでおり、耳まで真っ赤になっている様はやけに淫らである。
「可愛いね、先生」
そんな男を後ろから抱きしめるのは病院服を着た少年だった。
中学生か、あるいは中学生になったばかりだろう。あどけなさが印象的で、そのせいか線が細く見える。少年が患者で、この病室の主であるのは一目瞭然だが、どこが悪いのか見当がつかない。もう快方しているのだろうか。
それはあながち間違いではないだろう。一回りも二回りも年齢が離れた男のアナルに指を突っ込み、ひたすらGスポットを擦るのはそれなりに元気がなくては出来ないのだから。
「先生、気持ちいい?」
少年はもう一度囁く。
医者は時間をかけて無言で頷いた。Gスポットを擦る指は2本で、ひたすらに擦るだけ。それだけなのに。
「んっ、んんっ、ふっ、くぅ!」
喘ぎ声が漏れ、腰がヒクンと揺れてしまう。
何とか両足に力を込めて膝立ちを維持しているものの、いつ体がベッドの上に倒れてもおかしくはない。熱い。腹の中の熱が熱くてたまらない。解放したい。前を触りたい。だけどそれは。
「駄目ですよ先生」
今日はメスイキをするんですから。
後ろから抱きつく少年が死刑宣告をする。医者は絶望する自分とは裏腹に体がじわりと火照っていくのを感じた。もう1本、入ってきた指に筋肉が勝手にきゅうっと締め付けていく。
「ふふ、可愛いな先生は」
「あ、や、大人を、からかうんじゃ、ぅぁ、ない、ンッ」
「からかってないですよ。本当のことを言っているだけ……ね?先生?」
「っ」
尋ねるようでいて、有無を言わせないプレッシャー。
そしてクスリと笑う少年の目に宿った被虐を目にした医者は体をビクビク跳ねさせながら押し黙る。
どうしてこうなったのだろうか。元気で、愛想の良い少年だった。病院通いしていたものの、運動神経が良くて大会にも出場できる子だった。けれどその少年はいない。自分が治療を後回しにしたせいで。
「なに考えてるの?」
ドライアイスのように冷えた声が少年から発せられる。
医者がギクリとした次の瞬間、少年の空いていた手は医者の乳首のほうへ動き。
「やっ、あ、あ!」
思い切り乳首をつねった。
その間もGスポットへの愛撫は止まない。
「ほ~らほ~ら」
「や、やん、あっ、あああ!」
ついに喘ぎ声を堪えられなくなった医者は舌を突き出し、腰もビクッと揺らす。股間はすでに膨れんでいるどころか、シミをつくっていた。
そして、ついに。
「あっ、ああああーー!」
医者の意識が白く灼ける。
たまりにたまった熱が内側で爆発し、その衝撃が全身を巡る。気持ちいい、気持ちいい。気持ち良さが止まらない。ビクビクする震える体を手放しにしていた医者に少年は囁いた。
「それじゃあ今度はオナニーしてください」
医者は頷くしかなかった。
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