瀬川護は、15歳になるというのに外の世界を知らなかった。それは、父親の和也の教えだった。外は危険なところだと。本もテレビもインターネットさえない瀬川家では、護の世界はすべて和也だった。和也が勉強もマナーもなんでも教えてくれた。窓もない部屋の中には、和也が撮った美しい空の写真が貼られていた。護にはそれで十分だった。だが、護には最近悩みがあった。それは、ここのところ夜になるとおこなわれる、大人になるための勉強だった。
「始めようか、護」
ベッドに腰かけた和也が、おいでと手招きをする。眼鏡の奥の優しい眼差しに、護は小さく息を吐いた。近づいた目を閉じれば、そっとキスをされる。初めて和也にキスをされたのは1ヶ月前のことだった。大人になりたいと言った護に、和也が教えてくれたのだ。
(キスって、気持ちいい)
口の中をゆっくりと和也の舌が這い回る。そして、護の小さな舌を見つけると、軽く吸った。困るのは、身体の変化だ。
和也に毎日キスをされているうちに、なぜか股間が熱くなるのだ。ムズムズして、形を変えていく自分の性器が護は羞恥を覚えていた。
(父さんは、これが大人の証拠だと言ったけど)
和也の指にしごかれ、護は達した。これは親が手伝うものなのだと和也からは聞かされた。
「今日は、もっと大人になるためのレッスンをしよう」
パジャマを脱がされた護は、全裸の身体を和也に見られても、なんだかとても恥ずかしくなった。太陽を浴びていない護の身体は白く、内側から光っているようだった。そして、小さくてピンク色の乳首はツンと立ち上がり、少しでも触れられると、それだけで身体中にしびれが走る。
「この間みたく、ジッとしてるんだよ」
言われて、護は頷いた。和也は護を抱き上げると、小さく震える性器を口に含んだ。護は、この行為がたまらなく恥ずかしくて嫌だった。でも、大人になるためと我慢しているのだ。だが、身体の中を駆け抜ける熱い感覚は、護に恐怖心を与えた。
「ん、あっ、はあっ、あっ、あっ、父さんっ、怖いよっ、あっ、また、変なのが、ああっ」
無垢な身体は、あっという間に追い詰められ、和也の口の中に精を吐き出した。
おそらく無意識なのだろう。護は腰を突きだし、より深い快感を貪ろうとしている。和也は唇の端をあげると、自らも服を脱いだ。子供の護とは違う、厚い胸板に、腹筋が浮かぶ裸体。眼鏡を外した和也は、いつしか護が知る父親の顔ではなかった。
「護。父さんのを同じようにできるかい?」
「わからない」
「やってごらん」ベッドに腰かける和也の前に座り、護が小さく舌を出して性器を嘗める。まるで、子猫がミルクを嘗めているようで、たまらなく可愛かった。
「はっ、あっ、上手だよ、護」
和也は焦る自分を押さえた。本当なら、このまま護を押さえつけて、小さな蕾に自身を突き立てたかったが、まだだ。幼い護を怖がらせないように、15年もかけてやっとここまで育てたのだ。ここで失敗するわけにはいかない。護を自分好みに育てるのが和也の計画なのだ。
「父さん、これで僕は大人?」
疲れきった護が眠そうに呟く。和也はあやすように裸の護を抱き締める。
その頃。テレビでは、15年前より行方不明となっている瀬川親子の特集が組まれていた。